撮影紀行 001 ― 違わず ―

2月。夜。早目にフェリーターミナルに到着した。苫小牧から乗船し、朝、陽が昇る前には八戸の港にいた。そこからすぐ、朝は珈琲を欲しがるのでコンビニエンスストアに向かい、そこの駐車場で、車の中で、岩手県の種差海岸へ向かう道順を、その先の海岸線になるべく沿った道を確かめていた。

雪や気温やは北海道の2月末のそれと、然程違わない。しかし、渡った海から陸に降りた途端、何らかの密度や土地そのものが人を包む気配や気質や、或いは何より空の雲の在り方は北海道とはまったく違う。風の力もまた。

2016年2月は陸前高田から仙台を。2017年6月と8月は宮城を訪れた。2017年の9月は福島の南相馬、浪江、飯舘を中心に、そして立ち入ることが許されるところまで、通過するだけが許されるところは車内から撮影した。2017年2月は大槌から仙台の荒浜までの撮影だった。

今年、2018年2月は、岩手県九戸郡の洋野町から、宮城県仙台市若林区の荒浜まで、四日間の陽の出から陽の入り。海岸線に沿って南下してゆく。ここ数年、どこか懐かしいようにも心思い続けている東北の、いまを少しでも見つめたい。

先に進みたい気持ちと、立ち止まりたい気持ちがあり、瞬間瞬間にシャッターを切り、写真にいまが残る。

 

この国で何が起きたのか。

この国で何が起きているのか。

この国で何が起こりうるのか。

 

そのことをいつも考える。

一寸でも私はそこにいた、私はここを見た。その限りしかない。

 

2018年2月 岩手にて

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1970年 北海道名寄市生まれ。

2016年2月 岩手県陸前高田市にて東北の撮影を開始。2017年には岩手県上閉伊郡大槌町から南下、2018年には岩手県九戸郡洋野町から、宮城県仙台市若林区荒浜までの東北沿岸部を中心に撮影を行っている。2017年9月には福島県において、同年4月に避難解除となった区域及び周辺地域を撮影。

一般社団法人 北海道ブックシェアリング・理事
NPO法人 日本自治ACADEMY・理事
北の里浜 花のかけはしネットワーク・世話人