3.11から伝承すべきこと 002|3.11SAPPORO CINEMA はじまる
毎年のようにどこかで災害が起こり、「被災地」も「被災者」も増えて行く中で、まさか札幌でここまでの被害が出るとは思っていなかった、という人は多いだろう。
2018年9月6日に起きた平成30年北海道胆振東部地震は、震源地周辺のむかわ町、厚真町、安平町のほか、道内各地に地震による被害をもたらし、苫東厚真火力発電所の停止により全道的な大規模停電を起こした。
むかわ町、厚真町、安平町では、現在、仮設住宅の建設がすすむなか、コミュニティの存続や形成、在宅被災者への支援や状況把握、仮設住宅入居後の孤立を防ぐための対策、仮設住宅での寒さ対策などについて、町や社協、支援団体などが今後の支援の進め方を考えている。これらは、過去の災害において必ずと言っていいほど取り上げられる課題である。
一方、札幌市内では建物損壊が市内の一部地域での局地的被害だったことから、住宅被害を受けた方々とすでに日常生活を取り戻している人たちとのギャップが激しいはずなのだが、そのギャップさえも見えにくく、「みんなの日常」というぶあつい段幕に半ば強制されるが如く覆われているかのようだ。
札幌という街は
根っこから
都市化している街なんだ
私は今回の地震で、そう感じた。
3.11SAPPORO SYMPO実行委員会では、2018年11月から新たなプロジェクト「3.11SAPPORO CINEMA」をはじめる。キックオフ上映会は2018年11月30日。上映作品は小西晴子監督の「赤浜ロックンロール」。
東日本大震災・福島第一原子力発電所事故以降、100本以上の関連映画が製作・上映されている。中でも、ドキュメンタリー映画はその時々の真実を残す重要な記録であり、経験していないことを学び、知らないことを知り、私たちが「進歩」するために考えるきっかけとして、繰り返し上映すべき価値のあるものである。
なぜなら、過ぎた日のドキュメンタリーは、もう、二度と撮れないから。
「赤浜ロックンロール」は、国と県が決めた14.5mの高さの巨大堤防で海岸線を囲う復興計画に反対の声をあげた、赤浜の人々の姿を記録したドキュメンタリー映画である。
この作品が公開されたのは2014年。
それから4年が経った今年2月、赤浜では高台移転のための造成がすすめられていた。
赤浜はまだまだ復興の途上だった。
災害が起こるたびに言われる「忘却との戦い」。
私たちが「忘却」という課題を解決できずにいる今、「忘却してはならないリアル」があることを共有する場として「3.11SAPPORO CINEMA」がはじまる。