撮影紀行 004 ― むかう ―

岩手 2018年2月撮影

変化を、変わらないを、いまを、撮影にむかう。岩手へ、宮城へ、福島へ。

毎回むかう先に背負っていくリュックには、カメラが2台と、レンズが5本。ノートとペンと他にも必要な備品などが存外にあり、けっして軽くはない。撮影だけ目的の時に、この中に数珠と線香が入っている。

 

二月、風の強く悴む日。慰霊のための場所に立ち入った。

屋根の下には祭壇があり、諸宗の曼荼羅も、厨子も、十字架も様々の地蔵も塔婆も、祈りのそのままに安置されていた。花があり、手紙があり、鶴が数えきれないほどに、あり。

その前の年も

今年も

 

様々なタイミングと場所で撮影はする。

陽の位置と雲の動きも忘れ、ここに刻まれた様々に思いはめぐる。

けれど只の観察や、横柄な目撃や、興味本位の振舞いにならぬよう、慰霊の場所ではことさら不躾のないように、合掌し、供養の線香に火を灯し、それから少し見渡し、歩いてから撮影をする時がある。

撮影はいつも一寸で過ぎる。

されど私の命のある中で、また東北に来ようと、思いは続く。

いまを伝える。という手法に則って。

 

こころの作業ができなくなったら、私は撮ることを自分に課さなくなるだろう。

 

岩手 2017年2月撮影

2018年2月 岩手にて

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1970年 北海道名寄市生まれ。

2016年2月 岩手県陸前高田市にて東北の撮影を開始。2017年には岩手県上閉伊郡大槌町から南下、2018年には岩手県九戸郡洋野町から、宮城県仙台市若林区荒浜までの東北沿岸部を中心に撮影を行っている。2017年9月には福島県において、同年4月に避難解除となった区域及び周辺地域を撮影。

一般社団法人 北海道ブックシェアリング・理事
NPO法人 日本自治ACADEMY・理事
北の里浜 花のかけはしネットワーク・世話人